2011年04月16日

放射線の健康被害について

【放射線と遺伝的異常について】
マウスやショウジョウバエ、植物のなどに対する放射線照射の実験では、遺伝子の変化による放射線の遺伝的な影響が報告されている(1)。しかし、広島・長崎の疫学的調査では遺伝的異常は認められていない。動物で放射線の遺伝的な影響が見られて、人では見られないことは、現在の科学知識で説明できない(2)。被曝による子孫への影響の証明は、発生した癌が自然によるものか、放射線によるものか決めるのが大変難しく、今の科学では困難である(3)。

人間では自然流産した胎児の細胞で異常が見られている。長崎では大量の放射線を被ばくした胎児に流産、死産が多く、小頭症などの胎児奇形の頻度が高くなっている。流産、死産は対照群4%に対し23%である。受精後8週から出産までの期間では通常の被曝線量では胎児への危険性は少ないが、胎児の放射線感受性は成人より高いため、精神発達の遅れがみられることがある(4)。

被曝が多くなると癌が増える。長崎の被爆者を対象にした調査から、被曝した放射線の量が多かった人に 白血病、甲状腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、大腸癌、唾液腺腫瘍の発症が多いことが分かっている。また、放射線が癌を引き起こすことは動物を使った実験でも確かめられている(5)。


【チェルノブイリ事故の影響(6)】
チェルノブイリ事故は25年前の1986年に起きた人類史上最悪の原発事故。チェルノブイリ関連情報は深刻な被害から軽微なものに至るまで、疾病頻度や内容についての真偽が放射線障害と確認されないまま、広く世界に流布されているのが現状であり、その中で、小児甲状腺癌の激増だけは世界に類のないことで、チェルノブイリの原発事故が原因と認められている(3)。

■UNSCEARの現在の説明
・事故による57名の直接の死者を除いて、ベラルーシ住民(ロシア連邦およびウクライナ)のあいだでは、2005年までに、事故時に放射性物質に曝された、小児、青少年で6000例を超える甲状腺癌が報告された。今後10年間でより多くの罹患者が予想される。スクリーニング体制が急に立ち上がったことで見つかった癌患者も多かったはずだが、これらの甲状腺癌の多くは、放射線照射のあと短期間で発症したようである。 

・甲状腺癌は一般に治療効果を見込め、適切な治療により、甲状腺癌の5年生存率は96%、30年後の生存率は92%である。したがって、甲状腺癌による死亡者は最大500人程度となる。  

・この発癌率上昇を除くと、事故後20年間の被曝を原因とすることのできる公衆衛生上の事案は存在しない。

・ 癌全体の発症率上昇や、死亡率上昇、非腫瘍性疾患罹患率の上昇についての科学的エビデンスは存在しない。白血病発症は、固形癌と比べて放射線被曝から発症までがより短いため、主たる懸念事項の一つであるが、発症率上昇は見られないようである。多くの健康被害は放射線被曝とは関係していない。 

・IAEAとUNSCEARが共同で、先天異常、先天奇形、固形癌(肺がん等)の増加は認められていないとしている 。

・UNSCERは、1994年生まれの子供では、放射線によるミニサテライト変異が倍増していることから、長期の遺伝的影響の可能性についても取り上げている。この研究の対照群と長期間の効果が明瞭でない点については議論がある。

qa17-01


qa17-02


【要点1】チェルノブイリ事故前の正確な疫学データはなく、すぐには放射線障害によって癌が増えたとは言い切れない。

【要点2】癌が被曝によるものと断定することは大変難しい。その理由は、放射線以外にウイルスや紫外線、化学物質なども一個の細胞の遺伝子異常から異常細胞増殖すなわち癌化を起こすことと、かつ細胞に傷を与えた後、癌が発生するまでには長い期間がかるため、因果関係を明確にはできないためである。長崎の被爆者の中にも、十年、二十年経過して慢性的な症状や癌を発症する「晩発性放射線障害」があるが、その症状が一般の成人病とほととんど変わらないので、原因が放射線にあるのかどうか、今のところ科学的にも証明ができない。唯一、疫学調査の結果を重視して判定している。一般に癌の発生は種々のメカニズムで起こるので、発端となる遺伝子の傷が先天的なものか、また、後天的にどの影響によるものなのかを判定することは難しい。さらに、放射線による癌発生のメカニズムは、未だ不明な点が多いのが現状である(3)。

【要点3】事故の被災者たちはなすすべ無く、落胆し、将来を悲観することとなった。そのために、過剰な警戒行動、病気の増悪化、マッシュルーム、ベリーの過剰摂取、依然として高レベルに汚染されている地域での遊び、アルコールとタバコの 過剰摂取、無防備な性行動、といった無謀な振る舞いを次々と誘発した(6)。このように荒んだ生活を続けていると、【要点2】の理由によって、たとえ癌や白血病を発症したとしても放射線が原因と認定されない可能性が高い。

【要点4】チェルノブイリ事故で白血病患者が増えていない事実は、たまごどんにとって意外だった。要点3の理由かどうかは不明であり、これを言い出すと陰謀論に加担してしまうことになる。白血病の特徴は、放射線による白血病の発生率増加は、固形がんよりも大きいこと(しかし白血病は比較的まれな疾患なので、高線量被爆者の間でさえも絶対的な症例数は少ない)。次に、白血病は被爆後、早期に増加(特に子供で顕著)したことである(7)。白血病は放射線量に閾値があるのだろうか。

qa13



  参考URL
(1) http://abomb.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/qa/index_j_qa14.html
(2) http://abomb.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/qa/index_j_qa10.html
(3) http://abomb.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/qa/index_j_qa17.html
(4) http://abomb.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/qa/index_j_qa09.html
(5) http://abomb.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/qa/index_j_qa11.html
(6) http://logo-syllabary.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/wiki-assessing-.html
(7) http://www.rerf.or.jp/radefx/late/leukemia.html


th302d at 12:01│Comments(7)TrackBack(0)社会 | 科学雑記

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by wadja   2011年04月18日 22:09
力作ですね〜。しかも非常にわかり易いです。
こんどこの手の質問を受けることがあったら、『たまごどんが行く!』を紹介することにしよう。
2. Posted by たまごどん   2011年04月19日 22:17
>wadjaピョン
「普段はヌルい記事やけど、時には頑張るブログなんやで〜」っていう感じで、「たまごどんが行く!」を広めてやってくださいな。

m(_ _)m
3. Posted by daigoume   2011年04月23日 07:36
1 this post is very usefull thx!
4. Posted by promo codes   2011年09月17日 17:49
1 私は本当に私がそう多くの有用な情報を読み取ることがないと言うことができます たまごどんが行く! : 放射線の健康被害について - livedoor Blog(ブログ). 私はのウェブマスターに私の感謝の気持ちを表現したい tamagodon.livedoor.biz.
5. Posted by たまごどん   2011年09月19日 07:37
promo codesピョン、「たまごどんが行く!」にようこそなのら。なんか翻訳ソフトみたいな感じだけんど、喜んでもらっているみたいだピョンな。

こういった内容の記事は少ないけんど、これからもたまごどんのブログを宜しくなのら。
6. Posted by facebook games   2011年09月26日 00:02
1 約ニースの記事 たまごどんが行く! : 放射線の健康被害について - livedoor Blog(ブログ). 私は非常にこの物語を書くに入れている時間と労力で感銘を受けている。私はあなたに私のソーシャルメディアのブログにリンクを与える。すべてのベスト!
7. Posted by online coupons   2011年11月17日 05:15
1 私は約そのような強力な物語を読んで感銘を受けて たまごどんが行く! : 放射線の健康被害について. 私はこのブログの記事に私のクーポンサイト上のリンクを掲載します。私は続きを読むに戻ってくる.

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
Twitter プロフィール
たまごどんが好きなものは、野球、寿司、北朝鮮ニュース、選挙速報、将棋、囲碁、酒、プロレス、国際情勢などなど。自前のアンテナに引っかかったことを取り上げます。滋賀で子育てに勤しむ一児のパパ。
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Archives