何とか熱も下がり、夕方にはたま子と雪の残る公園で遊んできた。大きな雪だるまと、小さなカマクラに喜んでくれたようだ。

病床で、武田一義さよならタマちゃんを読んだ。主人公は漫画家のアシスタントをしている35歳の既婚男性だ。精巣腫瘍が肺に転移して、化学療法に切り替わるところから物語がスタートする。BEP療法の副作用による吐き気、食欲不振、味覚要害の苦しみを、先輩患者のアドバイスや奥さんの献身によって乗り切る。クビになることを覚悟していたアシスタントも、漫画家の先生から武田くんの復帰を待つという申し出がある。そのときの先生のセリフがカッコいい。「迷惑かけたくない気持ちも分かりますけど、病気なんだからそれはあきらめませんか」

周りの言動が癇に障るというのも、入院患者ではありがちなことらしい。主人公のケースでは暴言の矛先が奥さんに向かい、そのことを後悔して主人公は落ち込む。このケースでは夫婦の絆を深めることになるのだが、患者同士で起きた諍いも描写されている。これって入院あるあるなのかもしれないな。

主人公である武田さんは化学療法が効いて完治する。手のしびれという漫画家志望者にとってはキツい後遺症を伴ってはあるが。退院間際に同じ精巣腫瘍患者の市川さんと主人公が語り合うシーンがある。「忙しかったのはホントだけど、命より大事な用事なんてひとつでもあったのかな。『今すぐ病院に行け』ってあの時の自分に言いたいよ。」市川さんの言葉だ。

さて、たまごどんには抗がん剤治療で苦しんでいる谷庵さんという友人がいる。さよならタマちゃんをたまごどんが手に取ったのも、彼のことが頭の隅にあったからだ。たまごどんでいうと、たま子はまだ4歳なので死ぬ訳にはいかない。しかし、彼女が15歳だろうが20歳だろうが、たまごどんは同じようなことを言いそうだ。「あの子が成人するまで‥」「あの子が結婚するまで‥」

作中の先輩入院患者である田原さんが呟くシーンがある。「年の順に人が死ぬのはそれほど悪いものじゃない。」そうかもしれないな。順番さえ狂わなければ、必ず訪れるその時の遅早は大した問題ではないのかもしれない。

少し湿っぽくなった。この漫画は武田さんのデビュー作になる。内容は相当にシリアスだが、絵柄が可愛らしく読み易い。それに、抗がん剤治療の実態を理解する入門書になっていると思う。武田さんには他にもいくつか作品があるようなので、目に留まったら読んでみます。
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