2020年07月22日

ミクロコスモスを解説する

さて、今日は最も長手数の詰将棋の解説に挑戦しようと思う。その詰将棋は、1986年に当時早稲田大学の学生だった橋本孝治氏が発表し、ミクロコスモスと名付けられている。たまごどんの解説の目標は、「将棋を知らない人にも、ミクロコスモスが長手数となるメカニズムについて理解できる」だ。

プロ同士の将棋は平均して120手前後、入玉模様になって200〜250手程度だ。世界最長の詰将棋は何手詰なのだろうか。正解は1525手詰。

まずは初形から見ていただこう。なんじゃこりゃ!攻方の玉以外は全ての駒が使われている全駒配置だ。こんなの解ける訳がない!
ミクロコスモス(初形)

大丈夫だ、水先案内人のたまごどんがついている。まずは18手進めた画面に進めよう。ここから魔法が起こる。手順は▲6三歩打△7二玉▲8三と△6三玉▲8四と△8三桂打▲7四と△6二玉だ。この8手進んだ局面(26手目)を並べてみよう。
1_持駒変換

18手目と26手目とを比べると、盤面が全く同じ配置で、攻方の持駒が歩から桂馬に変わっている。これが持駒変換という機能だ。18手目の局面になると、同じ手順を経て歩あるいは香を桂馬に変えることが可能だ。

続いて、盤面の51から11までの成駒に注目してほしい。26手目から▲61と〜▲12成香と動かすことで玉を二段目の好きな位置に送ることが出来る。これを「と金送り」とか「金知恵の輪」という。

持駒に桂馬を持ち、と金送りで王様を動かすと、玉方の香車が横に動く機構が出現する。原理はこうだ。玉方の合駒選択は歩と香と桂。その中で桂馬はここでは打てない。もし打つと、持駒変換の手順に出てくる桂合が出来なくなり、詰んでしまう。玉方は歩があるうちは歩を打ち、持駒変換で香桂交換になったら歩切れの玉方は泣く泣く香合をするという仕掛けだ。こうして香車が横に動くことになる。

いや、ここの解説は読み飛ばして構わない。香車位置変換により、玉方が香を合駒することで香車が横に動くこの仕掛けのイメージを持ってくれれば十分だ。102手目、162手目、266手目を並べておこう。玉方の香車と歩の配置しか変化していないことが分かる。
2_香車位置変換

竜が24に、香車が34になったときに盤上の別の駒が働くことになる。それが99馬だ。76歩で盤の隅にいた馬が戦線に加わる。この馬が次に動くのは89で、その時は1筋に香が配置されてなくてはならない。馬が次に進むのは88だ。馬がノコギリの刃のように進むので馬ノコと呼ばれるが、この馬ノコを進めるためには、持駒変換+と金送りをして香車位置変換のうち一手だけ指し、さらに持駒変換+と金送りをして香車位置変換を一手だけ指し…、を繰り返す必要がある。

ようやく見えてきた。ミクロコスモスは3つの歯車が組み合わさって出来ているメカニズムで構成されているのだ。これを図示しよう。
ミクロコスモスのメカニズム

一つ目の歯車は持駒変換+と金送りだ。これが進むことで2つ目の歯車である香車位置変換の一手が進む。これを進めるためには桂馬が必要なので、持駒変換してと金送りをして、香車位置変換の一手を進める。そして香車位置変換がある配置になったところで、3つ目の歯車である馬ノコの一手が進む。馬ノコが99馬から88馬に進むためには実に340手が必要だ。そして馬は66まで進めなくてはならない。馬ノコの局面をピックアップした。手数に注目してほしい。それぞれ285手目、625手目、973手目、1321手目だ。1321手目の局面に、馬の軌跡を赤矢印で示した。
3_馬ノコ

66馬からは収束に入る。13香の形にしてから竜を切り飛ばし、玉を中段に追いかける。66馬はこの時の脱出防止のためだった。

どうだろう。たまごどんは今回の記事を書くために相当な時間を費やしているが、将棋を知らない方にも「なるほど!」と膝を打って頂けたであろうか。

ミクロコスモスの詰手順の解説動画のリンクを貼っておきます。


th302d at 21:11│Comments(0)将棋 

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