2021年03月24日

「藤井の4一銀」は後世に語り継がれる

昨日話した「藤井の4一銀」の反響は凄かったようだ。まずは局面を見てもらおう。後手の松尾八段が4四にいた角で8八の銀を取ってきた局面だ。
8八角成の局面

















駒があちこち当たっていて目が回るが、後手は「飛車はあげるけど、馬と持駒の金銀で寄せ切っちゃうよ」という主張だ。8四飛、7八馬という手順で、いったんは受けに回るかなというのがたまごどんの見解である。先手は駒得なのでそれでも戦えそうだ。

後手の主張は、詰めろが一瞬かかりにくい点にある。5一金が玉の守備に働き、4一への逃亡ルートも確保している。

藤井二冠はここで59分考えた。中継元ではAIで局面を解析していて、そのAIは4一銀を推奨されていたらしい。手の意味としては比較的説明しやすい。4一銀に対して6一玉と逃げるのは8四飛〜8一飛成が詰めろで入る。4一同玉には32金、52玉となり、銀を捨てることで32金がゼロ手で入る計算になる。そこで8四飛、7八馬となったときに、42金、同金、3四桂が詰めろで入るのだ。なので4一同金となるのだが、この局面は4筋が壁となり、8四飛の威力がより厳しくなる。結論すると、4一銀は詰めろがかかりにくい後手玉に対し、詰めろをかけやすくするための捨て駒である。

こうして書くと、なんてことのない手に思われる恐れがあるな。とんでもない!銀捨ては自玉の危険度を増し、詰めろが途切れると必至級の詰めろを覚悟しなくてはならない手なのだ。後手玉にはまだ耐久力がありそうに見える。先手玉を寄せるだけの戦力を保ちつつ、詰めろを切らせば後手の勝ちだ。

松尾八段は藤井二冠対策として、自分の研究将棋に持ち込むことに成功した。しかし、彼の研究では4一銀が見えてなかったようだ。後手の時間の使い方から判断すると、飛車を取るしかない局面で長考に沈んだ藤井二冠の様子から、松尾八段は4一銀に気づいたと思われる。

金銀を守備に使えば詰めろは続かなかったが、今度は戦力不足に陥る。松尾八段は先手玉に詰めろをかけて、即詰みに打ち取られる順を選んだ。4一銀以降は後手勝ちになる図はなかったようだ。

にしても…。藤井の4一銀は、中原の5七銀、羽生の5二銀、大山の8一玉、谷川の7七桂と同じく、これから先も繰り返し語り継がれる一手になるだろう。升田幸三賞(その年度最高の妙手に贈る賞)は神の一手、4一銀で決まりだと思います。

th302d at 23:45│Comments(1)将棋 

この記事へのコメント

1. Posted by たまごどん   2021年04月17日 06:26
https://www.shogi.or.jp/news/2021/04/48_4.html

升田幸三賞(特別賞)は、同じく藤井二冠が棋聖戦で指した3一銀でした。4一銀は年度末だったことも影響して、選から漏れたようです。残念!

3一銀も藤井二冠の読みの凄さが分かる名手だけど、手としては地味だからなあ。

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